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[卒論メモ9]捏造された戦争⑤ [::卒論memo]

本当に米西戦争はジャーナリズムが後押しして勃発してしまった戦争なのか?

そうした見解がもっぱらだが、反対意見もある。マッキンリー大統領が本当にマスメディアの影響を受けたのかという点である。マッキンリーが多くの新聞から情報収集に努めていたことは事実のようである。だが、そこから世論の動向を汲んで戦争を決断したとは言い切れない。

それは、彼が独自の情報ルートを持っていたと言われているからだ。独自のルートから仕入れた情報が決め手になって、スペインとキューバの関係を絶つ判断を下したとも考えられる。以前から、アメリカはキューバに多額の投資をしていた。仮にキューバの紛争を放置していたとしたら、野党からの糾弾は避けられない。それを防ぐために武力を介入させたという解釈も可能である。

また、ニューヨークジャーナルのハーストが話を過剰に大きくしたという意見もある。今日では報道による世論煽動が原因として有力視されている。それは、ハーストが新聞の偉大さを強調するために吹聴したことにあるかもしれないのだ。その誤った解釈が現在まで語り継がれているのかもしれない。

他にも、ドイツが艦艇を送り込みキューバに介入する動きがあったためマッキンリーが先手を打ったというもの、ニューヨークヘラルド現地記者が本社に送った暗号をアルバイト少年が解読し間違えて開戦に繋がったというものまで様々な諸説がある。

1つの出来事が1つの原因から引き起こされるとは限らない。

大抵は様々な要因が複雑に絡み合って成立するものである。米西戦争がひとくくりに「新聞が巻き起こした戦争」とは断言できない。

しかし、当時から“マスメディアに好戦性があった”ことは明白な事実である。

スキャンダラスな記事で大衆を惹きつけ、販売数を伸ばす戦略として多くの新聞が開戦へと鼓舞したことに間違いはない。

参考資料:
戦争とマスメディア―湾岸戦争における米ジャーナリズムの「敗北」をめぐって(石澤靖治著)


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coach purses

私は秋云に乗せて手ぶらでない雨となっていますが、成熟した水田のなかで私を豊かにさせる。
by coach purses (2011-01-05 10:59) 

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